バラの香りを化学的に解釈する1
https://hati8chang.hatenablog.com/entry/2026/06/28/104138
こちらではバラが芳香する
花弁の表皮細胞の形状について説明しました
次はその成分や代謝と生合成についてです
正直、ここの内容について、私は全然理解できていません
専門家でなければ理解するのは難しい分野となります
簡単に考えると、植物がもっている物質を使って
その物質を目的(芳香)のために細かくしたり、添加したりします
細かくするハサミ的なことには「酵素」を使用しています
例えば植物の場合は光合成により「糖」を生み出し
それを材料にいろんな素材に変えています
これはヒトも一緒です
食べ物を摂取し糖まで分解したあと
今度はその糖を使ってエネルギーを作り出します
糖はそのままでは使えないため、使えるように細かくしたり、添加したりします
これを「解糖系」という代謝となります
このイメージを頭おき、なんとなく理解してくれれば大丈夫です
では、説明していきます
生物は生存や環境への適応のために
さまざまな代謝経路をもっています
多くの生物が共通してみられる代謝を
「一次代謝」といいます
一方ある特定の生物に見られる代謝のことを
「二次代謝」といいます
植物は多種多様な低分子化合物を合成しています
それらは、光合成により
水と二酸化炭素からつくられる糖を原料として
さまざまな化学反応が連続して
組み合わされることにより生産されています
生体内で連続した
化学反応のことを「代謝」といい
代謝によって生体分子が合成されることを
「生合成」といいます
生合成は生体内に存在する
生体触媒である「酵素」によって行われます
生きた花の香りの研究モデル植物ペチュニアから園芸花きまで
大久保直美
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/56/4/56_560413/_pdf/-char/ja
画像は上記の文献の図3です

植物の香気に関係する代表的な「代謝」は
・シキミ酸経路
・非メバロン酸経路
・メバロン酸経路
・リボキシゲナーゼ経路
【芳香族アミノ酸ファミリーの生合成】
芳香族アミノ酸とは
分子構造の側鎖にベンゼン環などの「芳香環」を持つアミノ酸の総称です
バラの香りの主成分(フェニルエタノールやゲラニオール、オイゲノールなど)は
芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンなどを原料として合成されます
★「芳香族」をもっと簡単に
芳香族化合物とは狭義では「ベンゼン環を含む化合物」と定義されています
炭素(C)と水素(H)が輪っか(環状)に結合した
「ベンゼン環」をもつ物質のグループを「芳香族」といいます
非常に安定した構造をしており、特有の化学反応を起こすのが特徴です
代表例としてベンゼン、トルエン、フェノールなどがあります
名前に「芳香」とあるように
私たちがいい匂いだと感じる花の香りの成分も
実はこの芳香族化合物に分類されます
この「芳香族」の物質が
花びらの表面から気化して空気中に広がることで
私たちに心地よい香りを感じさせます
・シキミ酸経路
植物や微生物が光合成などで作られた糖を元にして
芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)を作り出す
生合成経路のことです
バラにおいては、この経路で作られた「フェニルアラニン」を起点として
あの華やかな香気成分(フェネチルアルコールなど)が生合成されます
・シキミ酸の生成:これらが複数段階の反応を経て
中間体である「シキミ酸」へと変換されます
(この物質を植物から初めて単離したためシキミ酸経路と呼ばれます)
・最終産物:最終的に「コリスミ酸」を経由し
芳香族アミノ酸が合成されます
【テルペノイド(イソプレノイド)】
基本単位であるイソプレンが複数結合した炭化水素の総称
・非メバロン酸経路
バラにおける「非メバロン酸経路(MEP経路)」は
植物の葉緑体(色素体)内で行われる生合成ルートです
バラの香りの主成分である「ゲラニオール」などのモノテルペンや
花弁を彩る黄色い色素「カロテノイド」の材料を作り出すために
重要な役割を果たしています
テルペノイドと呼ばれる物質の基本単位である
IPP(イソペンテニル二リン酸)などを合成します
・メバロン酸経路
バラにおけるメバロン酸経路(MVA経路)とは
バラの甘い香り成分である「ゲラニオール」などの
テルペノイド類(イソプレノイド)を生み出すための重要な代謝経路です
アセチルCoAを出発点として
バラ特有の揮発性香気成分を作り出しています
★バラの香りの正体とイソプレン
バラの甘い香りの主成分は「ゲラニオール」 です
これは、炭素5個を基本単位とする「イソプレン」(C₅H₈) が
2つ結合した「モノテルペン」(炭素10個)というグループに属しています
イソプレンはゲラニオール(バラの香り)の
化学的な「最小ブロック」として機能しています
植物は、このイソプレン単位をつなぎ合わせ
さらに酸化や水素の付加といった
複雑な酵素反応(メバロン酸経路など) を行って
ゲラニオールを作り出します
人間がフラスコなどの化学実験でこれを一から作ろうとすると
危険な試薬や特殊な触媒を用いた
多段階の有機合成プロセス(イソプレン法など) が必要になり
非常に困難なため人工的に作り出すのは困難です
例えばトイレの芳香剤などの「バラの香り」は
あまり良い香りだとは言えません
バラに近い複雑な香りを出すためには
天然のバラから香り成分を抽出し添加する必要があります
安いトイレの芳香剤にも
「天然の成分」が入っているケースが高いのですが
質があまりよくありません
香水などでバラの香りを使ったものは
良質なものですと3万円くらいします
ちなみにもう少しで散りそうな花びらを集め
バラの芳香剤を作ろうと試みたことがあります
家にある「無水エタノール」を使用したところ
バラの香りより「無水エタノール」の
アルコール刺激臭が強く出てしまいました
使うアルコールの選択をミスったようです
バラの香りを抽出するためにはアルコール度が高く
しかも香りが少ないものを利用するようです
代表的なのは発酵アルコールだそうです
それと花びらの量ですね
香りを抽出するためにたくさんの花びらの量を必要とします
結局、買った方が安いと思いました
【脂肪酸誘導体(脂肪酸の生合成)】
・リポキシゲナーゼ(LOX)経路
リポキシゲナーゼ経路とは
細胞膜の脂質が酸化・開裂して香気成分を合成する代謝系です
バラなどの花では、この経路により
緑葉の香り成分(GLVs:ヘキセナールなど)が生成され
さらに別の代謝酵素の働きを経て
特有の芳香成分へと変換されます
バラの花弁内では、LOX経路に由来する中間体が
テルペン合成酵素などの二次代謝系と組み合わさることで
ゲラニオール、シトロネロール、フェネチルアルコールといった
バラ特有の華やかな芳香成分(モノテルペン類など)が合成されます