最近の農薬は難しく
生き物を利用した農薬が多々ある
微生物は私たち哺乳類に比べて
種類や数が山のようにいる
だからこそとても複雑
それに細菌と菌類
まずその区別から始める必要性がある
それは分類学が一番わかりやすい
BT製剤は
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)
こちらの菌を使用した殺虫成分の農薬の一種
頭文字を略してBT剤
ちなみにバチルス菌とは
納豆菌が代表とされる「バチルス菌」
まず生物的な分類でみると
ドメイン:細菌 Bacteria
門:フィルミクテス門 Firmicutes
綱:バチルス綱 Bacilli
目:バチルス目 Bacillales
科:バチルス科 Bacillaceae
属:バチルス属 Bacillus
種:枯草菌 Bacillus subtilis
納豆の学名は
納豆菌(Bacillus subtilis subsp. natto)は枯草菌の一種となる
バチルス サブチリス サブスピーシズ ナットー
属名:バチルス
種名:サブチリス
subsp.(亜種を意味します)
亜種名:ナットー
すごい近縁的に思えるが実は結構違いがあり
多くの学者が異論を唱えているらしいです
・まず、枯草菌を蒸した大豆に振りかけると腐敗する
・たんぱく質分解酵素「ナットウキナーゼ」は枯草菌は作れない
・納豆菌が生育するために「ビオチン」が不可欠
ある研究では納豆菌(宮城野菌)と枯草菌のゲノムは一致は82.4%
しかし14.3%は納豆菌の固有の遺伝子となるだった
「納豆菌と枯草菌の共通点と違い」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/11/106_756/_pdf
このバチルス類菌は
とても丈夫な菌で
菌の世界においてものすごい強者となります
たとえば発酵の職人たち(お酒造り等)
バチルス菌(納豆菌)を持ち込みを禁止しています
※納豆食べるの禁止
理由はバチルス菌が他の菌を駆逐してしまうからです
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)
ドメイン:細菌 Bacteria
門:フィルミクテス門 Firmicutes
綱:バチルス綱 Bacilli
目:バチルス目 Bacillales
科:バチルス科 Bacillaceae
属:バチルス属 Bacillus
種:B. thuringiensis
この菌は殺虫剤として
アメリカではメジャーな菌なのだが
なんと発見は日本
1901年に石渡繁胤によってカイコの病原菌として発見
お蚕様が卒倒と呈して死亡することから
卒倒病菌と名付けたが新種の記載を行っていなかった
後ほどドイツの学者がこの菌を発見し
ドイツの地名「デューリンゲン」にちなんで命名
アメリカで殺虫剤として販売されたあとも
「蚕」を守るため輸入を禁止
しかし調べてみると意外に身近に存在している菌のため
BT製剤の輸入を解禁した
しかし近年、輸入食材において
散布されているケースが多く
豆腐や豆類による汚染が話題になっている
問題にならない程度だが下痢毒も
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfm1994/12/4/12_4_249/_pdf
B. thuringiensisは
B. cereus(セレウス菌)と近縁種で
両者の鑑別は殺虫性の結晶タンパクを形成するか否かだそうだ
豆を食べることが多い日本では
96%輸入に頼っている
ではBT製剤としての作用機序を説明すると
鱗翅目(チョウ・ガの仲間)の幼虫が
食べると結晶性の殺虫性タンパクをつくる
すると消化管(中腸)に存在する
特定の結合部位に結合し
結合した部位の細胞が破壊され
虫はマヒ状態
さらにその傷から消化管内で芽胞から発芽した
BT菌が体腔の中へ侵入感染し、虫は死亡
死亡には2~3日を要するが
食下後2~3時間で接触活動は停止
遅効的であっても被害が進まないんだとか
https://www.jppn.ne.jp/jpp/s_mokuji/20190312.pdf
ちなみにこのような菌が自然界に多数あり
種類によってはコガネムシや羽虫
ハエなどに対して同作用があるんだとか
日本で出回っているのは
鱗翅目の幼虫を対象としたタイプ
系統は以下の通り
クルスターキ系(亜種)
「エスマルクDF」
コナガ、オオタバコガ、ハマキムシ類などに高い効果
アイザワイ系
「フローバックDF」
「ゼンターリ顆粒水和剤」
ヨトウムシやハスモンヨトウなど大型のりん翅目害虫に高い効果
ブイハンター(亜種:ブイブイ系)
通称ブイブイ系と呼ばれ、コガネムシ類の幼虫に高い活性があり
(現在、販売中止)
等がある
蚕糸昆虫研究におけるBT研究の歴史について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/konchubiotec/77/3/77_3_181/_pdf/-char/ja
ちなみに私がターゲットにしている
クチバへは効果はあるのだが
別に薬剤(放線菌を使用したタイプ)の方が効果的だそうだ
またバチルス・チューリンゲンシスのつくる
結晶性タンパク質には
「パラスポリン」という
ヒトのがん細胞に対し高い殺傷性をもち
しかも正常細胞に対しては殺傷性がなく
癌の治療薬となりうると期待されている
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/1312/2009-02-06.pdf
しかし、まだ基礎研究の段階から抜け出ていない